桑野造船株式会社
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ボートオールカヌー・ドラゴンボートパーツ関連商品コース・施設記念品コラム
 
ボートコース敷設の原則
今回はボートコースロープの布設について、素材の選択と施工設計の原理原則を紹介します。実際の工事は項目が多岐にわたりますので、工事手順の解説は別の機会とします。
以前に紹介しました浮桟橋の作り方に比べると、コース敷設はかなりの覚悟と資金が必要です。しかし、これからボートコースを計画して予算を確保のあと専門業者に発注する立場にある方にも、参考いただけると思います。当然のことながら自前の施工なら、重厚な工事はできなくても廉価の費用でコースを完成させることが可能です。ただし、JARA認定コースを目指す場合は、距離表示板とかの付帯機材製作が専門業者でないと難しいと予想します。
コースロープの種類と特徴
◎ ステンレス(SUS)ワイヤーロープ
一般的に広く採用されています。高耐張力(切れない)、高弾性(伸びない)で機能的には一番コースロープに適しています。金属製なので重量(比重)が大きいために水中では浮きません。水面での施工はかなり重労働で簡単にナイフ等での切断もできないので、素人作業は危険を伴います。さらに塩水域では、取付け金具との異種金属間の電気腐食が発生するために、使用はお勧めできません(対塩水のワイヤーもありますが耐用年数が短くなります)。比重が大きく、ブイ数が少ない場合はブイがワイヤーの重さで水面下に沈むので、別途ロープに浮体を付与する必要があります。
◎ 合繊ロープ
合成繊維製の撚編ロープとして十分な高耐張力を保有していますが、張力により伸びるので、予めブイの位置をマーキングしておくことは不可能です。軽くてナイフでの切断ができるので、水上の作業が容易で安全です。また、接続も一番簡単と言えます。金属パーツを取付けても腐食等の心配はないので、塩水域に適しています。比重が小さくて浮くために、ロープに錘(おもり)を付与する必要があります。
◎ プラスティック・モノフフイラメント
農業用のプラステイック単線押出し成形品です。コースロープとしては一番耐張力が低く、低弾性ですから張力によって容易に伸びます。最後は降伏点に達して切断に至ります。合繊ロープと同じく軽いため、錘は必要になりますが作業性はいいです。前記の二つのロープに比較して廉価です。切断時の接続は容易ではありません。正式の認定コースの布設は問題が多いですが仮設コースには適しています。
【 ロープの緒元データ比較 】
※単位価格は目安です。販売店、購入数量によって差があります
種類 破断張力(kgw) 破断荷重伸度(%) 比重 価格比(単位価格の目安/m)
SUSワイヤーロープ
(φ3mm)
5,000〜6,000 3〜 約7 7 (約100円)
合繊ロープ
(φ8mm)
600〜900 30〜 約1 13 (約200円)
PETモノフィラメント
(φ3mm)
200〜350 20〜50 約1.3 1 (約15円)

 
ブイ

ボート競技ではレーン境界ブイの直径は150mm、柔らかい材質であることが規定されています。またブイからコースロープまでの深度は通常2mです。大型船舶の横断があるときはさらに深く設置することも可能ですが、ブイが横流れする度合いが増えます。 コースロープがSUSの場合はその荷重によりブイが沈み過ぎるのでコースロープに浮体を付与する必要がありますが、ブイが12.5m間隔以下の場合はその必要は無くなります。逆に比重の小さい合繊、モノフィラメントの場合は、ロープが浮き上がらないようにロープに錘を付与する必要があります。
コースロープの張力と横流れの関係
コースロープは、「自身がうける水流による力」と「ブイが受ける水流及び風の力」により、横に流れます。原理的に横流れを完全ゼロにはできません。コースロープの張力と横流れの関係は以下の式で表すことができます。簡単にいえばコースロープの固定距離の自乗に比例し、張力に反比例します。


(例)250mスパンで100kgの張力でコースロープを張った場合の中央部の横流れ量(m)は、水流と風による応力を単位長さ当たり50(g/m)と仮定すると、
横流れ量(m) = ( 0.05 × 250 × 250 ) / ( 8 × 100 ) = 3.9(m)
となり、横流れが大き過ぎることになります。対策はコースロープ張力を上げるか、スパンを短くするしかありません。この場合は、モノフィラメント製コースロープは対応ができなくなります。SUSワイヤーなら張力を300kgにあげれば1.3mとなり、使用可能です。

結論的に言えば、横方向の水流や横風が強いコースではワイヤーロープしか選択肢はないことになります。 このほか増水による流木等が発生した場合は、コースロープが容易に切断、流失してしまいます。この対策はありません。増水が予想される場合は早目にコースロープを撤収するしかありません。
 



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