桑野造船株式会社
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来た 見た 漕いだ!
漕艇3日目

9月5日合計30キロ(ルツェルン〜ヘルギスヴィル〜ブオッホス)

今日のキャプテンはブロンウィン(オーストラリア)。夫君のワーウィックもキャプテンを務めている。根っからボート好きのオシドリ夫妻で、オランダ遠漕にも参加している。

クルーメンバーは、ローラ(アメリカ)、ハイディ(ドイツ、夫妻参加)、アンス(オランダ女性)。なんと男性は私一人。後で、ハーレム気分ですな、と冷やかされた。 

 朝から快晴で日差しがきつい。温度は30度を超えているようだ。ローラの舵で、ブロンウィンが整調。Oh, what a beautiful morning! Oh, what a beautiful day!と歌い出したいような朝だ。ブロンウィンのしっかりした漕ぎっぷりに感心しながら漕ぐ。湖の南岸に沿って漕ぎ進む。絶景かな、絶景かな、である。筋肉質で小柄なローラはいかにもアメリカ女性という陽気さで歌い出す。♪Row, row, row your boat. これなら私も英語で歌える。

しばし、皆で合唱したあとに、日本語で歌えという。あいにく日本語歌詞を知らないので、宮ヶ瀬湖漫漕歌を歌うことにする。日本のオアズマンによく知られた「ボート四季の歌」の替え歌である。最後の「アウーン、アウーン」が気に入ったようで、そこだけ皆が口を合わせる。愉快、愉快。前方に巨大なピラミッドの山塊、ピラトゥス、が現れる。山頂からの景観が雄大だと評判の山だ。

 前半12キロはたやすい。岸に着けるが、もちろん桟橋などない湖岸公園である。艇を岸に担ぎ上げるのはなかなかの作業だが、誰もが率先して艇に手をかける。男だ、女だと遠慮するところなし。実に手際がよくて感心する。砂が艇のレールに着かないようにと、神経を使う。足とオールをしっかり洗うように指示がでる。

 ガラス工場見学と食堂での昼食をすませて公園にもどる。なかには水浴を始める人がいる。仲間の女性が素裸で泳いでいたそうだが、私は木陰で昼寝をしていたので気づかず。

目覚めてしばしピラトゥスの峻険なる山容をながめ、「世は事も無し」のひとときを味わう。この山の名を冠したロープウエーが北八ヶ岳にあり物議を醸したことがある。数十年前に縦走の後、文句言いながら利用したことを思い出す。

 午後は私が整調。屹立する絶壁を右舷にみながら、一路ホテルのあるブオッホスに向かっていく。この崖の陰に入ると涼気満点。気持ちのよいローイングを楽しむ。途中定期船と交差しそうになる。舵手の判断で直進。めずらしく力漕をした。4時半に帰還。これでフィアヴァルトシュテッテ湖一周が3日かけて終了。艇は次の遠漕地に運搬する。

 ブロンウィン艇長の頼みもあり、進んで艇の運搬作業に参加する。まずは全員が各自の艇のリガーを取り外す。それから16艇とオールを運搬車に運び込む。これがなかなかの作業だ。2m近い巨漢が多いので、私のできる仕事は限りがある。

小柄なコウスケさんは率先して細かい作業をみつけては手を貸していて、頭が下がる。男性達は冗談を言い合いながらてきぱきと艇をかつぎあげる。Are you finished? と誰かが言うI am Danish! とデンマーク人のヘンリックが答えて笑う。この作業も遠漕の楽しみのひとつか。

 この日、昼食時、夕食時に聞いた話を紹介しよう。

ヤンス(ノルウェー)ノルウェーのフィヨルド遠漕仕掛け人。海での行事はなかなか気を遣った。デンマーク人と結婚しているが、実は15年前にトルコ・イスタンブール遠漕で知り合ったのが縁だとか。

ポール(アメリカ)NY州北部にあるスクルーン湖ボートクラブの会員。「会員数は?」と訊くと「私1人さ。」レースには興味なし。自分で艇を持ち、1人で漕ぐ楽しみを満喫しているが、この遠漕はいいね、と言う。

アンス(オランダ)今日一緒に漕いだ。優しく穏やかな女性。最高の山が300mというオランダに住むだけに山にあこがれてスイスにはよく登山にくる。夫君が数年前亡くなったが、夫君の趣味の乗馬につきあい、海外に出かけて草原を走った。モンゴールの草原も馬上漫走を楽しんだ。

まさに「舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへ、老いを迎ふる物は日々旅にして旅を栖とす」という生き方に感心。フルートやピアノの演奏も好き。ボートと山の切手収集も趣味のひとつ。戦時中オランダ領インドネシアにいて、日本軍に収容所に押し込められた経験をぽつぽつと語ってくれた。

ハイディ(ドイツ)夫君アクセルと参加。夫婦で40年近くこうした海外遠漕に参加してきた。今、女性だけの仲間20人とベルリンの川を上り下りして楽しんでいる。一日30キロは漕ぐわよ。昼食はもちろんビールを飲んで、女だけのおしゃべりを楽しむの。

イングリッド(ドイツ)夫君クラウスと参加。こちらも35年は夫婦で漕ぎ続けているそうだ。イギリスのテームズ川の大会がよかったわ。この話でジェローム・K・ジェロームのThree Men in a Boat(ボートの三人男)を思い出す。この二組のご夫婦はご存じなかった。

カール(オーストリア)「カール・マルクスのカールか?」と言うと「カール・ベームだ」と言う。「えっ、その指揮者ならオペラのフィデリオを指揮するのを見たぞ」というと大喜びで、ひとしきり音楽談話。遠漕も中国、ポルトガル、カナダ、と私的行事も含めてあちこちに出かけている。全くの漫漕派で、レース経験もなさそうだ。実際のオールさばきも、入れて出す、というものだが、この遠漕を一番楽しんでいるかもしれない。

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